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ソーシャルアクション『社会の潮目』

本業で得た知見を通じて、社会課題の解決を目指すリクルートの「ホンキの就職」。若者の雇用問題を重要な社会課題と位置づけ、若者の就職を応援する就活セミナー「ホンキの就職」を社会貢献活動として展開しています。2012年度は約4,200人の参加があり、4日間のプログラムでは、参加者の3ヶ月以内の内定率はおよそ50%となっています。その取り組みをCSR推進部の須賀様にお聞きしました。

 

株式会社リクルートホールディングス 「ホンキの就職」
http://www.recruit.jp/csr/community/employment/

(掲載日:2013/10/15)


深刻化する若者の雇用問題

【友田】「ホンキの就職」を社会貢献事業として御社が取り組まれているのはどのような背景があったのでしょうか。

【須賀】リクルートグループは、社会の課題を解決する企業群でありたいと考えています。 日本社会では、完全失業率が高止まりをしていますが、特に若年者の失業率は他の年代よりも高い推移をしています。例えば、平成24年学校基本調査では、大学学部卒業者の16%、6人に1人が進路未決定のまま卒業になっています。これは、大変ショッキングな数字です。リクルートグループは大学生も含め、若者の就職を支援する事業を展開していますが、それだけではカバーできない方々がいる。「ホンキの就職」ではそういう人たちに対して支援をしていきたいと考えています。

【友田】御社の業務領域の中で、若者の雇用という社会問題にフォーカスをしているわけですね。御社のWEBサイトを拝見していてもISO26000における社会的責任に関する7つの中核主題の一つ「コミュニティー参画および開発」に「ホンキの就職」が位置づけられていますね。

【須賀】それはISO26000の枠組みの中で、これまでの弊社における活動を整理した結果です。弊社は、創業当初から雇用に関する事業を行ってきており、雇用領域において、企業として果たすべき責任は大きいと考えています。特に若者の雇用は今後の未来を作っていく上で大切です。「ホンキの就職」はCSR活動として実施していますが、弊社1社だけでは限界があるので、より多くのパートナー団体と協働し、取り組みを広げていきたいと考えています。私たちは若者が自立することに対して全てを提供できるわけではありません。他社と一緒にやることで少しでも「すべての若者がイキイキと働ける社会を実現する」という目的に近づけるのであれば、是非、協力してやっていきたいと思っていますし、既に、育て上げネットさんのようなNPO団体との協働もはじめています。

【友田】同じフィールドで競合している同業他社とは、社会課題を同じにする場合も多いはずです。本当に社会課題を解決したいと考えているのであれば、是非一緒に手を組んで、少しでも社会課題の解決に進んでいってもらいたいですね。

【須賀】「ホンキの就職」は、当社オリジナルのパッケージになっていますが、弊社だけでやるのではなく、他の方々にも積極的に活用していただきたいと思っています。現在は、先ほど述べたNPOや大学と一緒になって実施していますが、このプログラムは無償で提供しているので、ご興味を持っていただける方がいれば是非声を掛けて頂きたいです。

 

若者を動かす“グループダイナミクス”

【友田】それでは「ホンキの就職」について具体的な内容を聞かせてください。

【須賀】「ホンキの就職」には4Daysグループワークと1Dayセミナーの2つのプログラムがあります。4Daysグループワークは、連続4日間ではなく、月曜開始なら次は木曜、翌週の月曜、木曜といった形で2週間の中で4日間開催し、それぞれ3.5時間のプログラムを実施します。1Dayセミナーは面接を強化するためのプログラムで、面接がうまくいかないという方に対して、自己PRにフォーカスをして実施するプログラムです。

就職できない若者がなぜ苦労するのか調べたところ、大きく3つの問題があることが分かりました。1つ目は、応募先職種への固執が強すぎること。例えば、出版や銀行の一般職にこだわってそれしか受けていない人がいます。これらの職種はとても就職難易度が高く、何度受けても採用されないといったケースは、決して珍しくありません。人気のある職種ばかり受けて、それ以外には目も向けないというケースは多いですね。2つ目は行動量が少なすぎること。例えば、新卒採用においては1社内定を取るには平均30社の応募が必要ですが、2-3社だけ応募してそこで止まってしまう人がいます。3つ目は面接スキルが足りないこと。企業には「自社の事業で活躍できる人材」を採用したいと考えており、面接官は自社が求めることが、求職者が持っているのか否かを見極めようとしています。しかし求職者は相手が何を求めているのかあまり考えずに、一方的に自分の話をし、かみ合わないことも多いようです。もちろん、就職活動がうまく行かない要因は他にもあると思いますが、この3つがうまくいかない大きな要因と考えており、これらを解決するプログラムとして、ホンキの就職を提供しています。
一般事務が就職しやすそうだと思っている若者は多いですが、中途採用における一般事務の倍率は0.18倍(2012年)で、そもそも10人に1~2人しか受からないのが現実です。その面接に落とされたことで「私は一般事務もできないのか」と落ち込んでいる人がいます。環境が厳しいのは事実ですがその事実を数字で理解することで、ある程度落ちるのは仕方ないから、足をとめずに頑張ろうと思えるようになりますし、あるいは、他の職種に目がむくきっかけになったりもします。

【友田】そうなんですね。足が止まってしまう人の多くは、失敗することに慣れておらず、その耐性が低いように感じます。失敗から学び、いかに成功につなげていけるかがポイントなんでしょうね。

【須賀】確かにその通りだと思います。ただ、だからと言ってその人たちに頭ごなしに「そんなことではダメだ、足をとめるな、もっと動け」と頭ごなしに言っても無理なのです。誰だって、短期間に20社から不採用の通知を受けたらさすがに凹んでしまいますし、それは理屈抜きの根性論で乗り越えられる問題ではありません。
就職活動に苦戦する人は、就職活動を継続する中で、孤独になっていくケースがとても多いです。「ホンキの就職」に参加して、「悩んでいるのは自分だけじゃないということにすごく救われた」という感想をよく聞きます。「ホンキの就職」は、自分だけではなく、参加者皆の力で頑張るというグループダイナミクスの力が大きく働くように設計しています。グループワークの時間を多く取り、共同作業を通じて、少しずつ自己開示をします。それをお互いに承認しあいながら、またグループワークを繰り返す。そうしているうちにこの場に対しての信頼感が生まれます。「ホンキの就職」では「1日1社応募する」という宿題を出します。単に宿題としてそれを言われてもやって来られない人も多いのですが、みんなで頑張ろうとなった時に変化が現れます。その場にいるメンバーに対する信頼感によって、相互を励ましあうという力が働くからです。そして、次の回の時に宿題をやってきた人には、皆で拍手をし賞賛する、できなかった人には、なぜできなかったかをみんなで考え、次はやってこられるよう励まします。

初期の頃は座学に力を入れてみたこともありましたが、それでは全く結果は出せませんでした。言われて動けるのなら、とっくにやっていますよね。試行錯誤で運営しているうちに、参加者同士の議論によって、自分たちの中から気づきが生まれる方が、結果的に、視野が広がり、就職活動に対する考え方や行動が変わる、ということに気がつきました。コンテンツを正しく伝えることも大事ですが、それ以上に、どういったらそんな「場」になるのか、ということを意識して、プログラムを運営しています。

【友田】ひきこもり支援の対応でも最初は1対1の相談になるが、徐々にグループに移行すると聞いています。以前聞いた事例で、国立大学の哲学科を卒業して、「働くって何か」と散々悩んでひきこもりになった人が相談にきていたところ、グループワークで参加者の18歳の女の子のニートに「そんなの何でもいいじゃん」と一言言われたことが吹っ切れたひとつのポイントになったという話がありました。グループワークをうまく活用されているのですね。

【須賀】そうですね。カウンセラーという立場では踏み込めないこともありますが、同じ立場であれば、「面接を受けてみればいいじゃん」と言えます。1歩を踏み出すきっかけとなればいいのです。

【友田】「ホンキの就職」で動き出す若者が就職できることはわかりました。若い人の離職率が高いことが問題ですが、「ホンキの就職」で就職した場合の定着率はどうですか。

【須賀】そのことは私も気になっていて、昨年10月に調べたところ、2年前に「ホンキの就職」で就職した人のうち、82.1%が現在も継続して働いていることがわかりました。働き始めて半年から1年の間の人になりますが8割は継続して就労していました。
何が良かったのか振り返っていますが、「ホンキの就職」では、単純な就職活動のノウハウを教えるわけではなく、キャリア観の醸成や、就職マーケットの理解を促した上で議論してもらった点がいいと思っています。やりたい仕事があっても多くの場合いきなりその仕事に就けるわけではありません。違う仕事をして身についた力が、10年後やりたかった仕事につながるかもしれないし、「何となく」で始めた仕事が天職になって、10年後も打ち込んでいるかもしれない。そんな先輩たちの事例を読んで、感じたことをシェアしたりもします。その上で、「1日1件の応募」の宿題を通じ、今、自分は現時点でどういうところに応募するのか。応募したら、それがどういう仕事でなぜそこに応募したのか、考えたことをグループの仲間とシェアします。そんなことを繰り返しながら入社を決めるので、一人で就職活動をした時とは違うのかもしれません。
「ホンキの就職」を実施する際には講師ではなくファシリテーターが進行します。みんなで議論して、みんなで整理する、それをリードするのがファシリテーターの役割です。そして自分で決める問題であることを伝えます。就職活動には、正解はない。自分で考えた納得解があるだけだ、ということは冒頭で伝え、まして先生に言われたから○○業界に入ったということではないのだということを最初に理解してもらいます。
ファシリテーターの大事なことは決して否定しないことです。違うと思っていても「それもそうだ」と受け止めて発言を促します。就職活動で苦労している方は、自己効力感が低いケースが多く、発言を否定することで、どんどん内向きの殻に閉じこもってしまうからです。ファシリテーターには忍耐力が求められますが、大事なことは、本人が行動を変えられるかどうかです。当人同士の議論の中では、時に意味のないアドバイスもあるかもしれませんが、1歩を踏み出し続けることが重要なのです。

 

ファシリテーターが参加者のやる気を引き出す!

【友田】参加者のやる気を引き出し、働くことについて考えなおす道標となるファシリテーターの役割が本当に重要なのですね。順調そうに見えますが、現状の課題としてはどのようなことがありますでしょうか。

【須賀】現在の課題は、実効性の向上、カスタマーリーチの拡大の2点です。実効性の向上にはファシリテーターの養成が不可欠です。ファシリテーターの力量がないとグループダイナミクスを生み出すことが難しいと感じます。参加者が未熟だったり、間違っていることがあっても、ファシリテーターはすぐに否定したり、自分の考えを押し付けてしまうのではなく、承認しながらぐっと我慢して引き出す必要があります。仮に、ホンキの就職のプログラムをマニュアルにそってやっても、ファシリテーターの力量が足りないと、実際に得られる効果の半分も達成できません。

ファシリテーター養成には、2日間の集合研修を実施しています。初日は朝8時から夜8時まで、翌朝9時からロールプレイングを行います。この2日間の研修終了者が、約100人います。その後、所属しておられる団体で実際にやっていただくところを、弊社のファシリテーターが見学し、状況に応じたFBをした上で、一定の水準をクリアしていれば、認定、正式に養成完了となります。お互いにタフなプロセスですが、ここはプログラムの品質の根幹なので、大事にしたいと考えています。認定ファシリテーターにも年1回集合研修を実施して技術の向上を図るなどのサポートも実施しています。またファシリテーターのスキルを構造化し、常に改善していけるような仕組みも構築中です。養成プログラムはまだ完成しているわけではなく、試行錯誤しながら、プログラムに還元できればと思っています。

カスタマーリーチという点では、我々だけでは限界があるので、大学、NPO、その他機関など問題意識を共有できる方々と協働することで、今後もパートナー関係を拡大していきたいと思っています。

【友田】パートナーである大学、NPOと共同して、社会課題に取り組む姿には非常に共感します。自社だけの利益を考えるのではなく、広くパートナーを募って課題解決に取り組まれるその真摯な姿勢が、社会課題の解決を促進していくと感じています。今後の更なる取り組みを楽しみにしています。

 

株式会社リクルートホールディングス 「ホンキの就職」
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