HOME > ソーシャルアクション『社会の潮目』 > パナソニック「NPO組織基盤強化」

ソーシャルアクション『社会の潮目』

10年以上、変わらずに企業市民活動として、一貫してNPOの組織基盤強化に取り組むパナソニック。企業とNPOの関わりでは、NPOの事業や活動に関する助成や支援が多い中で、組織基盤にフォーカスを当てている稀有な取り組みだと言える。その考えや狙いを担当であるブランドコミュニケーション本部、CSR・社会文化グループ主事の東郷様にお聞きしました。

 

パナソニック株式会社 企業市民活動 NPOの組織基盤強化支援プログラム
http://panasonic.co.jp/citizenship/pnsf/

(掲載日:2013/11/19)


NPOの社会的インパクトの増大を目指す

【友田】 御社では、一貫してNPOの組織基盤強化に取り組まれていますが、そのきっかけや考えはどのあたりにあるのでしょうか。

【東郷】 このプログラムは13年前の2001年に立ち上げました。当時の担当が、自身も市民活動によく参加しており、NPO事情に詳しく、NPOの活動が助成金に頼っていることが多い現状を目の当たりにしていました。活動やプロジェクトを発展させたいと思った時に、さらに多くの助成金が必要になってきますが、NPOの皆さんの話を聞いていると、活動助成金の多くは、活動するための費用は出ても、運営するスタッフの人件費は十分に充当されません。また、助成金は単年度である事が多いため、活動の中長期の展望が描きづらく、より多くの活動をしようとすれば、さらに多くの助成金が必要になり、色々な所に助成金の申請を行うことになります。そしてプロジェクトが終わると、報告書を書く手間に追われ、疲弊感が溢れ、担当者が組織から離れてしまうようなこともあり、組織としての成長を感じられないというようなNPOが見受けられました。これでは、社会課題の担い手であるNPOの持続発展性が危ういということが、我々の課題認識でした。

【友田】 私もNPO法人を運営しているので、よくわかります。現在は少しずつ変わり始めていて、事業型NPOも台頭していますが、それでもNPOの最大の支援者は行政だと感じています。NPOは市民活動であると言いながら、NPOの多くは行政や企業からの補助金、助成金を頼りに活動しています。現在、内閣府の情報によると4万8千ほどNPO法人が存在していますが、事業収入や寄付金などを中心に収益を得て、自立的な歩みをしている団体は、全体の10%も満たず、5%ほどではないかと感じています。

【東郷】 活動を助成金だけに頼るのではなく、また活動だけでなく、スタッフの育成や財政基盤の強化、組織マネジメント力の強化などと言った組織力の強化を意識しておかなければ、NPOの活動自体の持続発展性が危うく、社会課題の解決が遅れてしまいます。そこで弊社は、NPOやNGOが持続的に発展できる支援の形はないのだろうかと検討し、2001年にNPOの組織基盤強化を応援する助成プログラム「Panasonic NPOサポート ファンド」を立ち上げました。現在は、NPOサポート ファンドだけでなく、「マネジメント講座」や、「組織基盤強化ワークショップ」、「プロボノプログラム」、「マーケティングプログラム」を展開し、一貫して組織基盤強化支援に取り組んでいます。社会からNPOに寄せられる期待が大きい今、NPOの組織基盤の強化を支援することで、市民活動の持続的発展、社会課題の解決促進、社会変革に貢献したいと考えています。

【友田】 NPOの組織基盤強化は本当に素晴らしい取り組みだと感じます。企業としては、目に見える支援がわかりやすいので、「▲▲に助成したことで●●の事業ができました。それで◆◆が改善しました」と言える方がやりやすいですよね。しかし、そこで敢えてNPOの持続性や社会的インパクトを考慮して、変化や効果の見えづらいNPOの組織基盤強化を支援することに御社の社会との関わり、企業市民活動の本気度を感じます。

 

組織基盤強化への助成は、根を太くすること。それが、太い幹になり、多くの実をつける

 

【東郷】 そう言って頂けるとありがたいです。他社から、助成プログラムを立ち上げる際にヒアリングを受けることが多く、弊社の取り組みに共感していただけるので「是非皆さんも組織基盤強化支援を」とお勧めをするのですが、実際に「組織基盤強化を支援することにしました」という話は残念ながらまだ聞くことがありません。そういう意味では難しいことに挑戦しているのかもしれないと感じています。
「Panasonic NPOサポート ファンド」では、2001年の設立以来、219件、2億6千万円の助成をさせて頂きました。パナソニックの企業市民活動の重点分野である「環境・エネルギー」と「次世代育成支援」を対象に国内で先進的な取り組みを展開しているNPOや振興国・途上国で活動するNGOに対して支援をしています。
 2001年にスタートして10年が経過した時に、この組織基盤強化の助成プログラムが効果を発揮できているのかを検証する第三者評価を行いました。2009年までの助成先126団体を対象に評価を実施したのですが、組織基盤強化の支援により、当時抱えていた課題が解決されたかというところでは、「大いに解決された(8.3%)」「かなり解決された(42.9%)」「ある程度解決された(46.4%)」という回答している団体が合計97%を超えていました。自分達だけでは、通常、取り組むことのできない組織運営上の課題を対象にしていることを考えると、助成によって全体の半数を超える団体で課題解決が大きく進んだことは、助成プログラムの有効性を示していることになるのではないでしょうか。財政規模的にも、総収入が助成後に60%増え、またその後も年平均で36%成長し続けていたり、組織の体制としても、無給スタッフが減り、有給スタッフが増えていることが調査の中でわかりました。また、7割の団体が「主要事業の成果が改善・向上した」と回答しています。活動の結果、社会に実際に生じた変化や影響といったアウトカムとしては、「他団体への波及」や「新しい概念の社会での定着」などが挙げられています。

【友田】 やはり土台がしっかりしてくると事業も大きく成長することが示されたわけですね。

【東郷】 そうですね。組織基盤の強化が、主要事業の成果につながっていることが分かりました。NPOを木に例えると、個別の枝に実をつけることが事業助成であるならば、組織基盤強化の助成は、木を支えている土壌の部分に栄養を注ぐようなものだと思っています。土壌に栄養を注ぐことで、根が深く張り、幹が太くなり、木そのものが大きく成長し、結果的に多くの枝に実をつけることになる。それが、社会課題の解決促進に大きく貢献すると考えています。

【友田】2011年のプログラムを評価された後にプログラムの見直しをされたんですよね。

【東郷】はい。2011年にプログラムの見直しを行い、現在の助成のテーマは、「客観的な視点を取り入れた組織基盤の強化」としています。応募団体の皆さんには、「第三者」としてNPO支援機関やNPO経営支援の専門家の方に関わっていただきながら組織基盤強化に取り組んでいただきます。具体的に何を応援するのかというと、大きくは二つのフェーズがあり、一つ目は、組織の課題抽出・解決策の立案フェーズです。第三者の方に入って頂き、ご自分たちの組織の課題を抽出する「組織診断」を行い、その診断結果を踏まえて、自分たちで組織基盤強化の計画を策定してもらいます。
次に、組織基盤強化を行うフェーズとして、ここでも第三者の力を借りて、まず自分たちが立てた計画のブラッシュアップを行い、その上で実際に実行していただきます。「組織診断」とは、ご自分たちの組織課題を把握するための一つの分析手法であり、組織の現状を把握し、総合的に分析し、課題を抽出し優先順位をつけ、解決の方向性を見出すというものです。これまで助成を受けられた団体からは、「組織診断でステークホルダーの意見を取り入れるなど、多様な視点で組織を見直せた」「第三者の視点が加わったことで視野やアイデアが広がった」などの声があがっています。

【友田】 いわゆる伴走型の支援に近いですね。「自分たちは社会にとっていい活動をしている」という自負があるだけに、どうしても独りよがりな活動になりがちであるNPOにとって、外部からの意見は非常に有益に働くと思います。外部の目という意味ではプロボノも同じだと感じますが、こちらも2011年から開始されたのでしょうか。

【東郷】 そうです。プロボノプログラムも2011年からのスタートになります。

 

プロボノが社員のイノベーションマインドを育てる。

【友田】 先日のプロボノフォーラムで御社の社員の方が非常にイキイキと発表されていたのが、印象的でした。このプログラムは社員の方の声からスタートしたのでしょうか。

【東郷】 弊社では、数年に一度、社員に対して企業市民活動に対する意識の実態調査を行っています。その中で、自分が参加したい企業市民活動はどんなものかという質問に「社会の為になる」「気軽にできる」「楽しく参加できる」という回答が大半ですが、最近の傾向として、「自分が成長できる」、「仕事の知識・技能が活かせる」、「仲間ができる」という回答がぐっと増えており、社員のニーズが変化してきていると感じました。この新たなニーズにマッチするのがプロボノであると認識し、2011年よりこのプログラムを開始しました。
 プロボノプログラムの狙いとしては、大きく3つあります。
①社員のビジネススキル・経験をさらに社会の中で役に立てる。
②NPOサポートファンドで過去に支援した助成先を中心に、プロボノで社員がチームを組み、その団体の事業展開力の強化を応援することで社会課題の解決をさらに促進させる。
③プロボノというNPO支援を通じて、社会課題解決に取り組むNPOの現場に触れることで社員のイノベーションマインドの向上を目指す。
 まだ2年半の取り組みではありますが、88名の社員がプロボノとしてボランティア登録をし、実際には60名以上がプロボノに取り組んでいます。60名の内10名以上が、この2年半の間に継続、連続してプロジェクトに参加しています。支援団体の実績としては、12団体を応援させて頂いています。

【友田】やはり社員の意識も大きく変わってきているのですね。10名の人が2回目に参加するということは、社員にとっても満足度が高いことが伺えますね。

【東郷】 そうですね。参加した社員からは、「プロボノをして、自分では何でもない事をしているつもりが、NPOの方には非常に感激され驚いた」と言い、「自分でもお役に立てる、このように喜んで頂けるのならまた参加したい」という意見が出ています。また、NPOの皆さんと接する中で「忘れかけていた熱い思いに気づかされた」という声も。支援メニューは、中期計画の策定、営業資料の作成、ウェブサイトのリニューアル、マーケティング調査などです。
 NPOから感謝される以外に、一人ではなくチームで応援できること、ある程度の活動時間がよめること、期間が限定であること、成果物を納品することで、達成感を味わえるところがこのプロボノプログラムの魅力のようです。また、NPOサポート ファンドで応援した団体に、さらに社員が応援するということで、会社で既にお付き合いのあった団体というのが安心感にもつながっています。

【友田】 サポートファンドで資金やコンサルティングを提供した先に、次は社員の知恵を提供するのは非常に有益で、NPOの活動が加速すると思います。企業や社員が持っているノウハウを提供するのは、お金を出す以上に意味があるだと感じています。お金は一時ですが、ノウハウはずっと残るので、よく言われることですが、まさしく「魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教える」という、NPOが持続可能性を高める支援になっていますね。これはNPOにとっても非常に喜ばれますし、社員にとっても自分が学んできたことを活かせることは職業人として誇りになると思います。プロボノは、会社として本業に還元されるメリットも少なくないと感じますが、いかがでしょうか。

【東郷】 これからの時代において社会への貢献を果たしていくためには、本業でイノベーションを起こしていくことが重要になります。そのためには社員自身がイノベーションマインドを持っていなければならないと感じています。プロボノは即事業に直結するものではないかもしれませんが、社会課題の現場に触れ、その中で課題解決していく力が、今後の自分の仕事の中でも十分に活かされると思います。
 国内のNPOへのプロボノを開始した後に、より事業への貢献を意識した「新興国プロボノ」というプログラムも誕生し、順調に参加者数も増えています。新興国プロボノは、弊社がマーケットとして考えている新興国に夏休みや会社の節目休暇を利用して社員が現地に行き、現地の課題解決に取り組むNGOと一緒に現地に貢献するという目的で、2週間ほど滞在します。現地に行くのは一人の社員だけですが、その社員を支える仲間が日本におり、現地の状況等を聞いてチームで課題解決にむけて取り組みます。
長期の有給休暇を利用したボランティアプログラムですが、このような新興国プロボノにも手を挙げる人が増えてきています。本業でイノベーションを起こすという事が、普段の仕事や会社の中だけではなく、社会に出て現場で社会課題に触れることの必要性が会社全体に気運として高まっており、そのような意識をもつ社員が増えてきていると実感しています。単にNPOやNGOに寄付して支援するだけでなく、社員自らのスキル、経験をNPO運営に活かすところまでシフトしています。これからも時代の変遷や社会のニーズ、社員の思いに応える社会貢献プログラムを、様々なステークホルダーの皆さんとともに生み出していきたいです。

【友田】 お話を聞かせて頂くとプロボノが社会に対する社員の意識を高め、イノベーションマインドも育てていることがわかります。そういった意味では、本業に対しても遠回りですが、貢献は大きいと感じます。NPOを資金面だけでなく、人材面でもサポートすることにより、NPOも育ち、社員も育つ。そんな本業と社会貢献が統合されつつある活動になっていると実感しました。今後の更なる取り組みの発展を期待しています。


 

パナソニック株式会社 企業市民活動 NPOの組織基盤強化支援プログラム
http://panasonic.co.jp/citizenship/pnsf/

お問い合わせ/資料請求

このぺージのTOPへ

ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 ソーシャルアクション 社会の潮目 スタッフ・ブログ 世遊綽々
世遊名人対談